空手大会。父優勝の裏で一回戦撃沈の息子は・・・・


プライベートのFBなどでも自慢したので、近しい友人、知人はご存知かもしれないが、先日、空手の大会で優勝をした。

個人的には「エヘン、エヘン」と言うところである。

昨年の12月、47歳にして極真系のフルコンタクト空手の道場に入門して半年。

晴れてデビュー戦と相成ったわけだが、東京都大会という規模の大きなものであるにも関わらず、私のエントリーした部には選手は2人だけ。

ちなみに「45歳~50歳 初級 重量級」という部なのだが、この大会では、まず年齢、そして熟練度を表す帯の色(初級、中級、上級の3部門)そして、体重別(中軽量級、重量級)の3分野で区切られていて、この歳で「初級」ということは、習い始めて1年、2年程度ということだからそもそも数が少ない。(若い頃からやっている方は中級、上級)

更に重量級、しかも試合に出ようという物好きとなれば当然ながら数は絞られる。

他流派、全国からも参加OKの大会であるのに、それでもこの枠に応募したのは「2人」しかいないのだから、そう思えば試合が成立したこと自体が奇跡とも言える。

だが、これ。言い換えれば「則決勝」ということ。

たった2人。勝った方が優勝。

私の相手は身長181cm、体重92kgのメキシコの方だった。

デビュー戦が決勝戦、更に相手はデカい外国人選手。

我ながら面白い展開だ。

で、試合自体は冒頭で述べた通り、私が勝ち、優勝した。

とは言っても試合内容は決して褒められたものでもなく、冒頭、足の長い相手にガンガン蹴られ、後半疲れた相手に私の下段蹴りと突きが何発が命中。

たまたま相手がよろけれてくれたのが審判の心証に響いたようで、僅差の判定で勝ちを拾ったというお粗末な試合内容だ。

なお、対戦した方と試合後にお話をしたところ、お仕事の関係で1年ほど日本にいて、その間に親子で「カラテ」を習っていたとのこと。

来月には母国に戻ってしまうので、再戦する機会がないのが残念だ。

試合後、目を潤ませながら奥様と二人のお子さん達と抱擁している姿を見て、ちょっとジーンと来た。

一方、我が家。

妻は

「何だかゴチャゴチャやってってどっちが強いのか分からなかったね。でも勝ったんだね。ラッキー、ラッキー」

と言い放ち、夫の勝利に何の感慨もない様子。

そしてもう1人。

じっと湿った眼で私を見る小僧が・・・・

我が息子だ

遡ること30分前。

6歳の息子もデビュー戦を迎えていた。

元々、空手は息子が習っていて、それを見た私が「面白そうだな」と追随したもの。

道場内での立場は年齢より入門日が優先されるので、6歳の息子は私の「先輩」ということになるのだが、その「先輩」は1回戦で撃沈してしまった。

息子が出た部には4人の選手がエントリーされており、2回勝てば優勝。

親バカかもしれないが、息子の組手はなかなか良い動きをしているので、

「下手したら優勝もあり得るのでは?」

などとも思っていたのだが、あっけなく「技あり2つ(=1本)」で爆死。

正直、子供の部で時間内に決着が付くのも珍しいのだが(大抵はゴチャゴチャと殴り合っているうちに試合が終わる)、端的に言えば相手が強かった。

かなり試合慣れしている様子で、軽く技ありを取っていく。

息子自身も「あれ?もう終わったの?」と狐につままれたような感じだった。

つまり自分はあっさり負けてしまったのに、父親は勝ち、道場の仲間たちから祝福され、かつメダルまで授与されたことが悔しくて仕方がないのだろう。

「うー」と「くー」の間のような奇妙な音を発しながら泣いていた。

だが、それを見た私はちょっとだけ誇らしい気持ちになった。

自分の勝利に対してや、家族に強い父親像を見せられたことにでもない。

地団駄を踏んでいる「先輩」にだ。

悔しいという気持ちがなければ、上手くも強くもならない。

「ああ、あの人は凄いな。ああはなれない。」

そう思ってしまった人の末路などたかが知れている。

若い時から「超競争社会」にいて、成長のバネは悔しさ、惨めさの中にしかないことを痛感しているこの父は「オヤジは凄いなぁ。僕はダメだ・・・」などと言わず、恨めしそうにこちらを見ている息子こそ頼もしい。

多くの人が見ている会場でのデビュー戦。

47歳のおっさんですら緊張するのに、6歳でその場に立てただけで立派なもの。

「悔しいなら強くなるよ。」

そう言って、先ほどゲットしたメダルをかけてやった。

しかし、

「これは自分のメダルじゃない!!」

と叫ぶ。

おお、なかなか良い反応じゃないか。それで良いぞ。

小さな「先輩」の背中が、ちょっとだけ大きく見えた一日だった。

本日のコラムでした。

 

 

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6月 20th, 2023 by