商売の厳しさを感じた1週間


以前住んでいたマンションの管理組合の理事長を未だにやっている。

単になり手がおらず、お願いされるままズルズルとやっているだけなのだが、副理事長10年、理事長10年合わせて20年近くになる。

それを支えてくれたのがX氏。

私が副理事長の時に理事長を務め、私が交代で理事長になった際には副理事長を引き受けて下さった氏から、先日連絡があった。

物件を売却したので副理事長の職を辞したい

とのことで、これ自体は物件オーナーでなくなるので仕方のないことだが、大規模修繕や、厄介な我欲丸出しの住人対応などに20年間一緒にあたってきたので、一抹の寂しさがある。

X氏はマンションを職場として使用しており、デザイン関係のお仕事をされているのだが、お話を伺うとそこには厳しい現実があった。

現状、仕事に困ってはいないのだが、AIの台頭が凄まじく、AIツールを使えば素人でも簡単に「プロなみ」のデザインが出来るそうで、数年後には「廃業するしかない」というようなことをおっしゃっていた。

「本当はあそこで仕事を続けたかったのですが、先を見通して、高く売れるうちに処分しました」

とのことだった。ちなみに買った価格の1.5倍で売れたそうだ。

もう60歳近くで、お話の端々にそれなりに資産もお持ちのようなので、あとは悠々自適というところなのだろうが、ネットニュースなどでしか見聞きしない「AIに仕事が奪われる」という実例が身近で起こると、つくづく商売は難しいと痛感せずにはいられない。

更にもう一つ。

弊社の事務所がある水道橋のラーメン屋さんのお話。

水道橋はオフィス街でもあり、学生街でもあり、そして東京ドームもあるので、それらの人を見込んだラーメン激戦区でもある。

多種多様のお店が駅周辺にある。

だが最近人気の「家系(豚骨醤油)」となると、以前からAという老舗が一店舗あるのみだった。

完全に地元密着のお店で、このご時世にラーメン1杯650円。

最近ようやく値上げをしたが、それでも690円で、更に無料でライス食べ放題、という学生には嬉しいお店だ。(家系にはライスが合うので、一緒に食べる人が多い。もちろん体には悪い・・・)

そこに最近、杉並区にある家系の有名店Bが駅前に支店を出してきた。

こちらは一杯850円でライスも別途100円となる。

つまり、ラーメン+ライスを食べた場合、A 690円 vs B 950円で、260円の差がある。

判官びいきなのか、地元愛なのか。

当然ながら昔から安い値段で地域の人たちのお腹を満たしてきたAを支持する気持ちが強く、個人的にはBに対し、

有名店だか何だか知らないが、ここは長年愛されたAがある。まあ、精々頑張んな

という気持ちでいた。

当初Bは物珍しさから行列していたが、それも落ち着いたある日、試しに食べてみたところ・・・・

明確にAより旨い。申し訳ないがそれが本音。

もちろんラーメンの好き嫌いなど、個人の感覚なので絶対的な評価など出来ないのだが、私としては価格差を埋めるのに十分な味だった。

かと言って、若い人にとっては価格は重要なファクターであり、これからもAのニーズはあるだろう。

だが今まで水道橋エリアの「家系ニーズ」を一手に引き受けていたのが、Bの出現によってそれが割れる。

Aにとっては痛手だし、何よりBの存在によって「安さが売り」ということが明確になってしまったので、今後価格も上げにくい。

AI、有名店。

ゲームチェンジャーや強敵の出現によって、今まで安泰だと思っていた自身の立場が急激に危うくなる。

自由経済の元ではどんな業種、どんな職種にも起こりえることだ。

もちろん自分にも・・・

つくづく商売は難しい。

そう感じる一週間だった。

本日のコラムでした。

 

 

 

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6月 8th, 2023 by