我々のお墓事情「私はダイヤになりたい・・・」


日本というのは、長らく儒教の「先祖崇拝」の影響を受けてきたせいで、死後のイベントが多い。

お通夜、葬式、初七日法要、四十九日法要、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌などなど

「ホントに面倒くさいな。人が死ぬと」

最近、同世代(40代後半)の友人、知人も親が亡くなるようになってきて、これらのイベントの「主催者」とならざるをえないのだが、皆がその大変さを口にしている。

そして、その最たるものは「お墓」ではないか?

先に挙げたイベントは一日で終わるし、実際、やればやったで「親父(もしくはオフクロ)も喜んでいるだろう」と多少の満足感がある。

だがお墓は、春、秋のお彼岸とお盆。年に3回も行くルール。

何となく薄っすらしか覚えていないおじいちゃん、おばあちゃんであれば、あまり頻繁に墓参りをせずともさほど気にならないが、自分の両親ともなるとそういうわけにもいかない。

せめて年に1度くらいは顔を出さないと、良心の呵責と言うか、恨みを買いそうで怖い。

ちなみに、うちの実家はこれらにイベントに「うるさい家」だったので、子供の頃から年3回墓参りに行っていたが、苦痛でしかなかった。

うちの父も数年前に他界しているため、母が年3回の墓参りを欠かさず、私もそれに付き合ってはいるものの、

何だよまた墓参りかよ・・・

という感じで、腰が重いのである。

先祖崇拝の観点からすれば、不届き者も良いところだが、親父が眠っているとは分かっていても、実際にそう感じてしまうのだから仕方がない。

それでもうちの墓は都内から車で1時間程度なので、そこまで遠くもないのだが、これが新幹線や飛行機に乗らないといけないような場所であれば、実際問題として年3回は無理だろう。

帰省のついでなどに「年1回行くか、行かないか」というところで、それすら「帰省して会える相手(親など)」がいる間は良いが、その人たちも亡くなってしまえば、わざわざお墓参りのためだけに帰らないといけなくなり、そう考えれば「お墓」というものはなかなか重いものでもある。

そのため、最近ではお墓の「お引越し」をする方も多い。

遠方のお墓を「墓じまい」して、自分の住む地域にお墓を移すのである。

だが、これが一筋縄ではいかない。

地方のお寺では「墓じまい」の際に、高額の費用を請求するところ少なくなく、お客様の中には500万円を要求された方もいた。

とは言え、お骨を人質に取られていて、まさか夜中にこっそり持ち出すことも出来ないだろうから、渋々払うしかないのが現状だ。

なお、余談ながら、弁護士に

「お墓を開けて、お骨を勝手に持って帰ったらどうなるのか?」

と聞いたことがあるが、基本的にはこちらが管理を委託しているものを持ち帰るだけなので、窃盗には当たらず、お寺側は何の対抗処置も取れないのではないか。との回答だった(でも揉めるからやらない方が良いとのこと。)

これらのトラブルが多いため、今は専門業者もいて、そこに頼むと墓じまいの費用なども交渉してくれるそうだ。

なお、お墓の引っ越しはハードルは高いながらも「やって良かった」という方が多い。

ある方は、九州地方のお墓を閉じて、ご両親のお骨を都内のビル型のお墓に移したのだが、行きたい時にすぐに行けるため「何となく心の重荷が取れた」とおっしゃっていた。

なお、ここから更に発展して「墓すら持たない」というのも流行っている。

現在、60代、70代で自身も親や祖父母のお墓の管理に悩まされてきたような方が、

「子供たちに同じ思いをさせたくない」

と「お墓以外」の方法を選ぶ方も増えてきている。

まずメジャーなのがお骨を海に撒く「海洋散骨」

2021年にお亡くなりになられた脚本家の橋田壽賀子さんのお骨を、女優の泉ピン子さんが「勝手」に散骨したことでも話題になったが、これを望む方は意外と多い。

また、日本は海に囲まれているため、各地の海洋散骨を手掛ける業者がおり、驚くことに小売最大手のイオンなども参入している。

イオンのお葬式

エリアとしては沖縄などが人気があるらしい。

海は世界に繋がっているので、残された家族は墓参りの代わりに、海を見た時に手を合わせるというスタイルだそうで、私のお客様でもすでに「この方法に決めている」という方もいる。

なお、勝手に撒くと怒られるというか、バレると一応法律違反らしい。

また、最近では「サブスク方式」のお墓も出てきている。

のうこつぼ

毎月3,980円を支払えば、日本全国の提携寺院にお骨を納めることができる。

これであれば、子供世代の都合で「お墓を変えられる」ので、例えば東京にいる時は東京に、転勤や、引退して地方に移住する時も一緒に連れていけるシステムとなっている。

サイトを見てみると、200を超える寺院が登録されており、地域や宗派で検索できるようになっていて、なかなか良く出来ている。

それと私個人が良いと思っているのが「ダイヤ葬」

自分の骨を人工ダイヤ(ジルコニア)にしてくれるサービスがある。

スイスの会社が提供しているのだが、作成する大きさによって価格が変わる。

02カラット 528,000円から1カラット2,728,000円まで。

アルゴダンザ価格表

私自身は子供たちに、

「俺が死んだらダイヤモンドにして、神棚にでも並べておいてくれ」

と言い残してある。

年に2,3回しか、しかも「すげー面倒臭そうな顔」して来られるよりは、死後も子供たちと一緒にいた方が賑やかで良いし、まあ、管理不行き届きで紛失されたとしても、綺麗な石なら誰かが拾ってくれるだろう。

死後にダイヤとなって新しい旅が始まると思えばそれも面白い。

本日のコラムでした。

 

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8月 19th, 2022 by