またエリート狙い撃ち?退職金増税、多分こうなる!!


「退職金の税金って上がるのかね?・・・」

最近、そのような質問を受けることが多い。

きっかけは政府税制調査会が出した「答申」に含まれていた一文。

要約すると、

「現在の退職金の税制は多様な働き方に対応していない」

というもので、これをもってマスコミが「退職金にも増税か?!」と騒いだため、それを見聞きした「退職を意識し出す50代のおじ様たち」がソワソワしてしまったのだろう。

ちなみに件の答申は以下。

わが国税制の現状と課題

該当(退職金の議論)の部分ざっと読んでみたが、どこにも「増税すべし」とは書かれてはいない。

但し、以下のような記述はあった。

・現行の退職所得には年40万円の控除があり、20年を超えると年70万円となる。
これは一昔前の終身雇用を前提としたもので、転職が当たり前の現代のニーズには合致していない。

・退職金は前述の控除を受けた上で、更に1/2の総合課税(他の所得と合算して課税)されるが、近年、この1/2ルールの利用を目的に短期間の就業しか予定していない役員などで、役員報酬を下げ、その代わり退職金を多くする傾向がある。それを踏まえ令和3年の税制改正で「勤続5年以下の法人役員」には退職所得控除を適用した上で、更に300万円を超えた分には1/2ルールを適用しないようになった。

この2つの「問いかけ」が意図するところは、

・勤続が長い(20年超)だけで年40万円を年70万円にするのはズルいよね?

・短期間しか勤務してないのに1/2ルール適用はズルいよね?

こんなところだろう。

さて、次は別の角度からこの答申の「意味」を検討してみたい。

よく税制調査会のことを「税調」と言われるが、実はこの税調には2つある。

総理府が主催する政府税制調査会と、政権与党である自民党の内部の自民党税制調査会だ。

二つとも「税調」であり何とも紛らわしいが、この2つ、性格はかなり違う。

政府税調の方は財務省の意向が強いと言われ、メンバーにも財務省お気に入りの学者、経営者などが名を連ねる。

対して自民政調の方のメンバーは政治家。

業界団体、そして何より選挙を意識して意思決定がなされる。

そのため、政府税調は「あるべき論」を語るが、自民政調の方は「現実的な落としどころ」を見つけないといけない。

今回の政府税調からの「問い」に、自民税調がどう答えるか?

それはこれからの話だが、まあ、何となく結論は見えている。

まず、既に役員で導入されている「5年以下、1/2ルール利用不可」

これは恐らく一般の会社員にも導入されるだろう。

ただし、そもそも会社員において、勤務5年以下でそこまで多額の退職金を受け取るようなケースも少ないだろうから、そこまでの拒否反応はないと思われる。

何かしらの専門性を持ち、短期間で結果を出したことに対する「ボーナス」の意味で高額な退職金を受け取るような方が「痛い思い」をすることになる。

で、控除枠。

こちらも恐らく減らされる。

20年超も年40万円とする

という感じではないか?

しかし、これでも控除枠としては十分であり、例えば22歳で60歳まで同じ会社で勤め上げた場合、仮に20年超も年40万円になったとしても、

40万円 × 38年 = 1520万円

までは無税となる。

むしろ、これ以上の退職金を受け取れるような人はごく一部であり、世論としては

そんな人には課税して然るべき!!

という論調ではないか?

ここ数年、給与所得控除の枠がどんどん減らされ、年収850万円以上の方々に対する「ステルス増税(手取りの減少)」が繰り返されてきたが、これらの「控除枠を削る」という手法は収入が一定以下の人には関係がないため、批判も少ない。

また、徐々に上げられるといつの間にか慣れてしまうという日本人特有の「茹でカエル気質」もあるのだろう。

要は「エリート狙い撃ち」は、国民のハレーションを起こさずに済むので自民党としてもやりやすい。

今回「多分こうなる」と思われる退職所得への課税強化もその一環で、おそらくはさほどの摩擦は生まないのではないか?

数千万円の退職金を受け取るような人は羨望と嫉妬の的でこそあれ、憐れみの対象とはならないからだ。

一方、住民税非課税世帯は、また3万円を頂戴出来るとのこと。

それなりに貯金を持っているうちの母も貰った。

クックックック

一部のエリートを搾り上げ、多くの国民に小銭をばら撒く。

自民党というのは何とも老獪にこの国を支配している。

本日のコラムでした。

 

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7月 15th, 2023 by