医療費500円「上乗せ」なのに実質負担ゼロ!!のロジックを解説


少子化対策としての「少子化支援金」

その財源として医療保険料に1人あたり平均500円前後が上乗せされる方針が公表された。

だが、政府は

実質的な負担はゼロだ!!

と強調する。

まるでサンドイッチマン伊達さんの「カロリーゼロ理論(コロッケの中身はジャガイモ。野菜はカロリーゼロ、等々)」を聞いているような印象だが、本日は、摩訶不思議な「実質負担ゼロ!!」について解説していきたい。

まず、公的医療保険の保険料だが、そもそもこれがかなり複雑。

主に大企業を中心に組織されている健康保険組合(健保)、中小企業が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)、公務員・教職員などが入る共済組合、そして個人事業主やフリーランスが加入する国民健康保険がある。

また、これらとは別枠に75歳以上が加入する後期高齢者医療保険の計5つの制度があり、それぞれ料率や計算方法が異なる。

基本的には給与・収入の「〇%(保険料率)」という形で徴収されるのだが、同じ制度中でもこのパーセンテージは違ってくるのでややこしい。

例えば大企業などが加入する健保の場合、業種によって加入者の平均年齢、そして病気・怪我をする確率は違うので、それが保険料率に反映される。

建設関係の健保であれば、平均年齢も高く、仕事的にも病気や怪我などが多いだろうが、IT企業などの健保であれば、平均年齢も低いし、病気や怪我も少ないだろう。(その代わり精神疾患が尋常じゃないくらい多いが)

そのため、各団体によって保険料率に差が発生するのである。

平均9%と言われているので、10%のところもあれば、8%台のところもあるということ。

協会けんぽは都道府県ごとに異なり、例えば東京都は10%(40歳以上は介護保険料も加わり11.82%)だが、近隣の神奈川では10.02%、埼玉では9.82%となっている。(いずれせも令和5年3月以降の率、毎年改定される)

注:他にも共済組合、国民健康保険があるのだが、ここでは取り上げない。

試しに計算してみよう。

給与が30万円、保険料率が10%(東京都、協会けんぽ)の場合、保険料は3万円ということになる。これを「労使折半」するので、個人が1.5万円、会社が1.5万円を負担する。

また、これ以外に厚生年金の保険料や、40歳以上は介護保険料(1.82%)、そして税金が引かれたものが「手取り」となるわけだ。

今回、少子化支援金のために医療保険料が「1人つき500円上乗せ」されるわけだが、おそらくこの保険料率に一定の率をプラスさせるのだろう。

月500円というのは、全国民の平均年収である「年収400万円」を意識したものだと思われるので、年収400万円に対して月500円(年間6000円)は0.15%にあたる。

そのように推定すると、健康保険の保険料率を少子化支援金名目で+0.15%程度上げるのではないかと思われる。

そのため、「平均500円」と言っても、年収が600万円であれば月750円だし、1000万円なら1250円となる。

ここまでの話では純粋な「負担増」だ。

では、何故、これが「実質ゼロ」になるのか、そのロジックだが、ここからは一気にアバウトになる。

政府が言う根拠は2つ。

1 給与増による負担軽減

2 社会保険制度の歳出改革による負担軽減

1の方は、簡単に言えば

政府が企業に給与UPを働きかける!!
そもそもの給与が上がれば500円くらい払っても手取りは増えるだろ?

ということ。

だが、多くの人がこう思う。

自分の給与UPは自分と会社の努力の結果であって、お前(政府&岸田総理)には何の関係もない!!話をごちゃ混ぜにするなバカ!!

と。

そして2の歳出改革だが、これも政府の主張を叫ぶなら、こんな感じ

歳出(給付)を改革(見直し)して、社会保険全体の財政を改善します!!

歳出改革によって保険料率のは上げ幅を抑制します!!

まずこの話は健康保険料は「自然に上昇する」という前提に立っている。

高齢化する日本では医療費が上がることは当然であり、それに伴い健康保険料も上がる。

だが、歳出改革によって「上げ幅を少なくする」ことで、今回の少子化支援金での上がり分を相殺するというもの。

たしかに来年にも医療費の自然増によって保険料率を0.2%上げないといけないところを、「上げない」のであれば、少子化支援金の0.15%と相殺出来ていることにはなる。

しかし、そのためには高齢者への手厚い医療、介護への給付をカットする必要があり、それらの層に支えられている自民党が果たしてそんなことが出来るのだろうか?

事実、政府は来年度から介護保険の2割負担者の対象を拡大するという方針を打ち出したが、身内の自民党の反発を受け、見事頓挫している。

つまり、2の歳出改革は「頑張ります!!」という決意表明というだけで、完全な空手形ということ。

結局のところ民間の給与UPをまるで自分の手柄のように言い、肝心の難しい歳出改革は将来に先送りしているだけ。

それらをもって「実質負担ゼロ!!」と主張しているのだから、聞いているこちらの方が照れてしまう。

少子化支援金自体、堂々たる政策なのだから、負担増についても真正面から

「未来のためにお願いします!!」

と頭を下げれば良いし、そっちの方がよっぽど男を上げると思うのだが・・・・

本日のコラムでした。

 

 

 

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2月 11th, 2024 by